番外編②相続放棄することにしたらこれだけは知っておこう
番外編②相続放棄することにしたらこれだけは知っておこう
相続放棄とは何?
・親が亡くなり残した資産や負債を一切引き継がない行為をさします。
「知っていなければならないこととは」
相続というと、土地・建物等の不動産や預金などのプラス財産のイメージを持っている人が多いと思います。ですが、マイナスの財産があることを忘れてはなりません。それは借金等の相続と言い換えられます。
・借金はないと聞いていたが、実際は借金があったー。負動産だー。
・住まない実家=売れない実家は「負動産」。
「相続財産を放棄するなんてもったいない」というのは外野の言葉
・3つの注意点
- 「自分が放棄したら」それで終わらない
- 「正の財産」も受け継がない
- 相続放棄しても「管理責任」は残る
ここでは、3.のみ詳しく見てみます。
結果、相続人全員が、不要な不動産を相続放棄すると、法律的には「所有権のない不動産は国庫に帰属する」(民法239条)という状態なりますので、固定資産税を支払う必要がなくなります。
ですが、ここが注意です。
民法940条より「税金を払わなくてもいいけど、管理責任は残る」ということ。
・管理責任とは!
空き家相談でも度々でてくるのが、台風等でその不動産が原因で近隣に被害が生じたような場合には、損害賠償責任が生じたりする可能性が残ります。
・では、どうするのか!
管理責任から解放されるには、「相続財産管理人」の選任が必要になります。
ここは、お金がかかります。相続財産管理人は家庭裁判所によって選任され、多くの場合弁護士や司法書士がなどの専門家が選任されます。
ここでの注意は、相続財産管理人の選任には多額の費用がかかることもありますが、遺産を相続しない場合などは法的に必要な手続きとなります。
その際、相続放棄は重要な選択肢の一つとなることはわかりました。
・学校では教えてくれません。
・相続人になるかもしれない人は、知識を持っておく必要があります。
相談先を知っておこう
士業ごとの相続における専門領域が異なります。
相続の場面で登場する代表的な士業がいます。
・弁護士
・司法書士
・行政書士
・税理士
・弁護士
司法書士は「不動産の相続手続き」において、遺産に「不動産」があった場合は、司法書士に相続登記(名義変更手続き)を依頼します。
相続手続きのなかで裁判所が関係する「相続放棄」や「特別代理人の選任申立」や預金や株式等の金融資産の相続手続きなども、司法書士が取り扱うことができます。
・不動産の名義変更したい方(相続登記をしたい方)
・不動産および預金や株式等の相続手続きも依頼したい方
・相続放棄や特別代理人の選任申立など、比較的難しくない家庭裁判所の手続きを依頼したい方
ではどのような場合「弁護士」に依頼した方がいいのか?
・相続人のなかで遺産分割に応じない人がいる場合
・相続人のなかで行方不明者がいる場合
・相続人のなかで、遺産を使っている人がいる場合
争いごとがある可能性がある場合は、先に弁護士に相談してみることをお勧めします。
その他、知っておいた方がいい話―。
・「相続税」や「準確定申告」を相談したい方は必ず税理士に依頼しましょう。
※「準確定申告」とは、亡くなった人の生前の所得税についての確定申告のこと。
覚えておこう「3か月以内」
相続を放棄するには、「自身が相続人となったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所にへ相続放棄の申述を行う」必要があります。突然、あなたは相続人ですと言われる場合があります。しかも、あったこともない人の相続人になる可能性が多々あります。なので、相続人が死亡を知って確認してから3ヶ月以内に―となります。
自身が相続人なったことを知ってから3か月以内に何のアクションも行わなければ自動的に相続を単純承認(負債を含めてすべての相続財産を引き継ぐこと)した人とみなされますので注意。知らなかったでは済まされません。
相続を放棄する資産について
空き家や土地をはじめとした不動産はもちろん、預貯金・有価証券・宝石・貴金属・骨董品など財産全ての相続を放棄する必要があり、「実家(空き家)だけ放棄する」といった選択はできません。
相続放棄の申請が受理された場合には相続人から外れ、その後の相続には一切かかわることができなくなるため、財産より負債(借金)が上回る場合に相続放棄するのが最も多いパターンです。
相続放棄した実家(空き家)の管理について
前述のとおり、相続放棄とは「資産や負債を一切引き継がない行為を指す」わけですから、一見相続財産のひとつである空き家の管理義務もなくなるように思ってしまいます。
しかし、相続人全員が相続放棄した場合は話が別です。
空き家をはじめとした財産の「相続人の有無が明らかでない」状態となるため、民法に則り相続人不存在を明らかにしたうえで、相続財産管理人の選任が必要となるのです。
最も重要な部分がココ!
空き家を相続放棄しても財産管理義務はある
特に空き家は、放置することで損壊や倒壊、周辺環境への悪影響など、さまざまなリスクの温床となるため、適切な管理が必要です。
少し矛盾しているように感じるかもしれませんが、不動産の所有権はないにもかかわらず、相続財産管理人が相続財産の管理を開始するまでは空き家の管理だけは必要である、と考えれば分かりやすいでしょう。
ただし、財産管理義務が発生するのは相続人全員が相続放棄した場合に限られますから、自分以外の誰かが相続人となるのであれば、管理義務は発生しません。
管理義務の程度は、老朽化した家(空き家)や田畑、山林などを相続して管理が面倒でも、適切に対応する義務があります。(家庭裁判所で相続管理人を選任することもできます。)
空き家の相続放棄は、固定資産税の支払い義務がなくなるなどメリットがあるとはいえ、「不動産の所有権はないが管理は必要なため、コストや手間がかかる」といった落とし穴があるのも事実です。
結論、相続放棄すべきかどうかの判断は慎重に行うべきとなります。
相続放棄して金銭的メリット
・被相続人の借金(負債)を引き継がなくて済む
・被相続人が所有していた空き家や土地といった不動産の税金(固定資産税や都市計画税)支払い義務がなくなる
・負担が大きい財産を放棄できる(空き家や広大な土地などの管理・売却にかかわるコストをカットできる)
相続放棄して金銭的デメリット
・一部の相続財産だけの相続はできない(相続放棄する場合は相続財産全てを放棄する必要がある)
・撤回や取り消しができない
・空き家や土地など、不動産の将来的な活用の選択肢がなくなる
まとめ
空き家は、相続放棄の申立が受理された場合でも、状況によっては管理義務が発生する。そのたた、相続放棄すべきかどうかの慎重な判断が求められます。
空き家や土地といった不動産は住む・売るという選択肢だけでなく、立地や建物の特性に合わせた幅広い活用術が近年では報告されています。相続放棄がベストな選択肢ではないケースもあります。
空き家管理の手間や税金・管理コストなどを理由に相続放棄を考える人が多いようです。
相続放棄は不動産を含めたすべての財産を放棄するだけでなく、相続放棄後も空き家の管理義務が発生するケースもあります。
空き家という不動産を手放すことによる、メリットよりデメリットを理解してから、相続放棄がベストであると選択する必要があります。
最後に!
自分の場合は相続放棄するべきなのか?それとも空き家を相続したほうが良いのか?必ず専門の士業の方にご相談ください。
建築家、家相家として「建物」と「生活」のあいだをデザインしています。
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